福音による刷新

English version is here

「福音による刷新とは単なる出来事ではなく、生涯にわたる変革の旅である」という大胆な主張は、私たちのクリスチャン生活に対する認識に一つの疑問を投げかけるかもしれませんが、すべてのクリスチャンにとって重要な真理をいくつか簡潔に表現しています。信仰、ミニストリー、そして個人の成長という複雑な過程を経ていく中で、福音による刷新のプロセスと実践を理解することはとても重要です。それは、単にキリストを最初に信じたというだけにとどまらず、絶えずキリストにあって変革がもたらされるという恵みに満ちた経験が生まれることなのです。この記事では、福音がクリスチャンの人生にどのような影響を与えているかを考察し、福音による刷新に対して重要な応答をいくつか特定し、神が私たちの内でこの刷新というものをどう導き続けてくださっているのかを明らかにします。

福音がもたらす影響の理解 

福音による刷新の核にあるのは、「福音は動的(ダイナミック)である」という深淵な真理です。パウロはコロサイ人への手紙1:6で、「この福音は、あなたがたが神の恵みを聞いて本当に理解したとき以来、世界中で起こっているように、あなたがたの間でも実を結び成長しています」と書いています。福音は静止してはいません。生き生きと活動し、信じる者の人生において絶えず実を結ばせます。この現実は私たちに「福音が増し加わる」とはどういうことなのかを考えさせ、また私たちの心と人生についても考えることを促します。つまり、私たちは福音の変革的な力を体験しているのか、それとも単なる宗教的な儀式をこなしているだけなのか、という疑問です。使徒パウロがコロサイ人へ感謝の言葉を述べたように、彼らの「キリスト・イエスに対するあなたがたの信仰と、すべての聖徒に対してあなたがたが抱いている愛」(コロサイ人への手紙1章4節)は、私たちの生活において福音がどのように現れるべきかの模範です。ここから、福音を本当に理解すると自然で生き生きとした信仰と他者への自己犠牲的な愛が生まれることがわかります。キリストの福音は、私たちの本質を形作り、信仰を具体的な行動で現すように導きます。

福音の刷新の核心

このような変革はどこで起こるのでしょうか? 答えは明白です。心です。聖書は、心が情熱、欲望、決断の中心であることについて何度も言及をしています。箴言4:23は、「何を見張るよりも、あなたの心を見守れ。いのちの泉はこれから湧く」と教えています。私たちの心が新しくされない限り、私たちの行動は福音の変革の力からは切り離されたものとなってしまいます。心は単なる器官ではなく、私たちの最も内なる存在だからです。そこは私たちの愛、恐れ、欲望が宿る場所です。主は預言者エゼキエルを通して「あなたがたに新しい心を与え、あなたがたのうちに新しい霊を与える」と約束されています(エゼキエル36:26)。この神の約束は、神の恵みによって刷新される心が必要であることを強調しています。

福音による刷新の旅

福音による刷新は心で起こるということを理解した上で、どのように起こるのか、私たちは自問しなければなりません。刷新の旅には二つの重要な応答が含まれます。

信仰

コロサイ人への手紙3:1-2で、パウロは信者たちにこう促します。「あなたがたはキリストとともによみがえらされたのなら、上にあるものを求めなさい。そこでは、キリストが神の右の座に着いておられます。上にあるものを思いなさい。地にあるものを思ってはなりません」。キリストに心を向けよというこの呼びかけは、福音による刷新を体験するために不可欠なものです。それは、単に知的に同意する以上の体験です。キリストを心から信頼し、キリストの栄光を求めるという行為です。ティモシー・ケラーは、「聖霊によってクリスチャンにキリストを信頼し、キリストを喜びとするという新しい能力が与えられることで、霊的な刷新のサイクルは完成する」と述べています。このような信頼は、一度きりの出来事ではなく、日常生活においてキリストに力、慰め、導きを求める信仰が継続的に実践されるということです。また、悔い改めも刷新のもう一つの重要な要素です。コロサイ人への手紙3章5節は、「ですから、地にあるからだの部分、すなわち、淫らな行い、汚れ、情欲、悪い欲、そして貪欲を殺してしまいなさい」と命じています。この呼びかけは、刷新には罪から積極的に離れることと、私たちが心から愛する対象となろうとする偶像を拒絶する必要があることを思い出させます。

悔い改め

悔い改めは、ただ単に罪に対する後悔に止まりません。それは神との関係から私たちを引き離そうとするものを認識し、そこから逃れようとする強い願望です。J.I.パッカーは悔い改めを「あなたが知っている罪からできるだけ背を向けて、あなたが知っている自分自身のすべてを、あなたが知っている神への愛として捧げること」と定義しています。このプロセスは、罪と神の聖さに対する理解が深まるにつれて、継続して進んでいきます。成功、快適さ、承認など、あらゆる偶像から背を向けることで、福音は私たちの心に根付き、真の変化をもたらします。

恵みの手段(刷新への道)

恵みの手段は、神が私たちに恵みを与えるための道筋です。これには、祈り、神のことばを聞くこと、聖餐、他の信徒たちとの交わりなどが含まれ、それぞれ私たちが信仰と悔い改めをもって神に応答し、継続的に刷新されることが促されます。リチャード・ラヴレスは、福音による刷新が実現する上で、コミュニティの重要性を強調し、「恵みの手段として最も重要なことに、他のクリスチャンたちの存在がある」と述べています。同じ信仰を持つ仲間と関わることで、キリストとの歩みにおいて成長し、責任を持ちあい、互いに励まし合うことができるようなサポート体制が生まれます。

福音による刷新の実践 

福音による刷新の実践は、単に個人の努力によるものではありません。むしろ神のことば、御霊、そして神の民が共に働くことによって実践されるものです。ですからこのプロセスを操作することはできません。それは主にコミュニティという文脈において行われる神の働きです。個人主義が強調される世界において、私たちは、持続可能な個人的な刷新は通常、コミュニティの中で起こるということを覚えておかければなりません。神のことばに親しみ、それが私たちの考えと行動を形作る一方で、私たちは聖霊に頼り、そういった真理を私たちの生活に適用させるのです。このような刷新の共同体的側面は、信徒が共に成長し、苦難や勝利を分かち合うことができる環境を築きます。

刷新の継続的な旅 

結論として、福音による刷新は、私たちの心と人生を変容させる、深遠で継続的な旅路のようなものです。福音が私たちの存在をどのように形作っているかを理解し、信仰と悔い改めをもってそれに応え、恵みの手段を活用していくことで、私たちは継続的な刷新を経験する位置にする立つことができるのです。本記事の意義は、神学的な理解だけでなく、その実践的な応用にもあります。信徒として、私たちは、自分のミニストリーや、私たちの個人的な生活の成功や失敗が、福音による刷新の枠組みをどれだけ健全に理解しているかに左右されるという事実を認識しなければなりません。私たちの心が福音と一致しているとき、私たちは恵みと回復力を持って人生とミニストリーの試練を乗り越えることができます。この刷新の旅に一歩でる上で私たちは、上にあるものを求め、偶像から離れ、真のコミュニティの中で互いに関わっていくことを決意しましょう。私たちが、福音の変革の力に刻まれた民となり、神に栄光を表し、周囲の世界に神のご性質を反映するような実を結ぶ者となるよう祈りましょう。

実践的なストーリー:

日本文化の背景にある「世間」。それは俗に「世間様」と呼ばれる日本に存在する見えない神とも言われます。いわゆる1990年代後半から2010年2010年代前半に生まれたZ世代は、幼少期からインターネットやスマートフォンが当たり前に存在し、デジタル技術を駆使することに長けている「デジタルネイティブ」です。グローバルな世界に目を向け、文化や言語の境界線を軽々と超えられる彼ら若い世代も、実は今も日本社会に根強く残る見えない世間のプレッシャーから完全に解放されているとは言えません。世間はかつての地域共同体から、ソーシャルメディアの世界に移行しただけだからです。

そのような背景から強調される「個人主義」という概念が、日本では「集団的なアイデンティティ(世間の意見・圧力)」への二つの反応として現れます。一つ目に、日本の若い世代は世間から逃れるために、神そのものではなく、相対的な自由や自由主義という概念に頼る傾向があります。二つ目は、個人主義的な志向から悔い改め、コミュニティに希望を見出そうとする試みで、これもキリストではなくコミュニティの中で自分のアイデンティティを探そうとする傾向です。一方で、福音による刷新という旅路には、悔い改めと信仰、恵みの手段という要素が織り込まれています。それは一つのものから別のものへの逃避、あるいは信頼する対象の変更ではなく、神自身にのみ頼ることを学ぶプロセスです。この世界はまだ完全ではありません。様々な困難や試練のあるこの世界で生きていく上で、福音による刷新とは、だからこそ一生継続するプロセスであり、経験なのです。

著者:CTCJ共同執筆チーム 

2025年よりCTCJでは新しい試みとして、日本の都市開拓伝道の分野でのソートリーダーを目指すことをビジョンとして掲げました。共同執筆チームはその試みの一つです。主にスタッフを中心とし、多様な背景を持つ複数の執筆者・編集者が協力し、福音を土台、また中心とし、教会開拓者に役立つトピックに多角的に取り組み、一つの記事をまとめるチームです。